北極の氷が融けている!?—北極海航路開通は地球温暖化を証明しているのか?

2019年8月、トランプ大統領が「グリーンランドを買いたい!」と発言し、デンマークから「馬鹿げている」と断られたためデンマーク訪問を中止した。というニュースが流れたのを憶えておられるでしょうか?

この話、「トランプさん、まためちゃくちゃなこと言い出したな…」と笑い話のように報道されていますが、意外と笑えない要素満載なのです。

» 参考:「グリーンランド買いたい」「売らない」トランプ氏、デンマーク訪問を中止 | BBC

トランプ大統領がグリーンランドをほしい理由

グリーンランドは北極海(アメリカの北東)に浮かぶデンマーク領の大きな島です。面積は日本の6倍もありますが、8割が氷で覆われているため、人は5万人しか住んでいません。

なぜトランプ大統領はこの島が欲しいのでしょうか?

それは今、地球温暖化で北極海の氷が融け始めていると言われていることに関係しています。北極の氷がなくなってきたので、北極海を航路として使えるんじゃないか?という動きが活発になっているのです。

実はグリーンランド買収は、トランプ大統領が言いはじめたことではなく、歴史的に何度も検討されてきた話です。グリーンランドには豊富な鉱物資源が埋まっており、地政学的にも重要な位置にあります。アメリカだけでなく、いろんな国が注目している島なのです。

これまでは氷で覆われていたので、行くのも大変だし採掘も難しかったのですが、ここ最近、海氷が減ってきたことで急速にその存在価値が高まってきました。

すでに中国は2009年頃から盛んに鉱物資源調査を行い開発にも乗り出しています。今後、氷がもっと減少するようであれば、このような採掘ももっと容易になり、大西洋側と太平洋側の往来が容易になることから、ますます安全保障上の価値も高まってくると考えられます。

トランプ大統領は「地球温暖化は信じない!」とはっきり発言しており、気候学者は「政治的目的」を持って嘘をついている!と非難したことがあるほどです。そのトランプ大統領が、北極海の氷の減少を認め、それによる地政学的危機感を強めているということは、北極海の環境が大きく変化していることが避けられない事実であることを示していると感じます。

今回はそんな「北極の氷が減っている」という現実について、現在の状況、何が起こっているのか?そして、IPCCの提唱するCO2地球温暖化とどんな関係があるのか?などを検証してみたいと思います。

北極の氷ー40年前と比較すると…

まず、北極の氷がどれくらい融けているのかを見てみましょう。気象庁のサイトで確認できます。

» 参考:北極域と南極域の海氷分布図 | 気象庁

まずから見てみましょう。1979年と2019年の1月の様子を比べます。

どうでしょうか…?少し減っている感じはしますが、それほど違いはないようですね。

次はを見てみましょう。1979年と2019年の8月の様子を比べます。

これは・・・、かなり少なくなっていますね・・・。

冬の間は全体に氷が張るので船が通るのは難しいかもしれませんが、夏は船が通れるようになりそうです。(すでに現在夏の2ヶ月ほどは開通しているようです)

では、なぜこんなに融けているのでしょうか?やっぱりIPCCがしつこく言うように、CO2を原因とした地球温暖化が進んでいる影響でしょうか?

「北極 温暖化」などで調べると、あらゆるサイトで「地球温暖化によって北極の氷が融けている!」と騒いでいます・・・。

そんな中、私が注目したのは東京海洋大学の島田浩二教授の研究です。島田教授は海洋環境科学の専門家で、25年にわたり北極の研究や現地での調査をされています。国際的な研究プロジェクトにも多数参加されており、地球気候変動のスペシャリストでもあります。

» 参考:東京海洋大学 島田研究室のページ

論文、サイト、講演資料などを公開されており、誰でも研究報告を読むことができます。これらを参考させていただき、私が理解できた範囲で北極の氷が減少している理由を説明したいと思います。

北極の氷が減少している理由

北極の氷は、人工衛星での観測がはじまってから急激な海氷減少が3回確認されています。(2009年までのデータ)

1回目の急減は、1980年代終わり〜1990年代初頭。
2回目の急減は、1997〜1998年。
3回目の急減は、2007年。

これらの急減により現在かなり海氷が減少していることは間違いありません。
しかも急減が繰りさえされたことで、すでに北極の氷は「なくなっていく循環」に陥っており、もとには戻らないと考えられています。

まず、北極はもともと氷の厚さがすごく薄いという特徴があります。海に浮かぶ氷はたった2mほど。南極は平均2000mもの厚い氷に覆われているので、まったく状況が違います。この南極についてのフェイクニュースは数知れず、このブログ(南極で初の20度超え!? やっぱり温暖化は進んでいるのか?)でも紹介しましたが、南極では、氷はほぼ変化していないと思われます。↓

話を北極に戻しましょう。
実は2008年コンピューターの温暖化シュミレーションでは「2020年には北極海から氷がなくなる」と予測されていました。しかし2020年現在、なくなってはいません。地球温暖化で氷が融けているのであれば、同心円上にまんべんなく氷が融けていくはずですが、そのようにはならなかったのです。下の北極海の写真(2019夏)のように太平洋側(赤枠部分)では大きく減少していますが、大西洋側ではそれほど減少していないという状況です。

つまり、大気の温度上昇によって全体に融けているという状況ではないということです。
島田教授も「気温の上昇で融けたのではない」とはっきり指摘しています。そして「大事なポイントは海が温暖化して氷ができにくくなり、冬に氷が成長する量が減り、夏に融ける量の方が多くなってしまったという点です。」とおっしゃっています。

北極の太平洋側の海水が温暖化してそちら側でだけ氷が成長しなくなっているわけです。

海が温暖化したというと、やっぱり地球温暖化と影響があるんじゃないの!?と思うかもしれませんが、実はまったく関係ありません。

このベーリング海峡付近の水温は1990年代を通して低温傾向にありました。しかし1997年、エルニーニョ現象(※1)の影響で、突如平年よりも4℃高い暖水が太平洋から北極海に流れこんだのです。温暖化どころか低温傾向にあったのに、この年だけ上昇してしまったわけです。

(※1) エルニーニョ現象とは、中部・東部太平洋の赤道付近において海水温が1年以上にわたって上昇する現象のこと。太平洋を流れる赤道海流が通常より弱まることで、太平洋赤道域東部の海水温が上昇する。世界中の気圧に変化をもたらし異常気象を発生させる。海水温の上昇や異常気象が強調され、地球温暖化と関係があるかのように報道されることが多いが、エルニーニョ現象は、これとは正反対に太平洋赤道域東部の海水温が低下する「ラニーニャ現象」と交互に起こっている。これらは地球規模での自然現象であり、古くは200年以上前の記録も残っている。ここ数十年の現象ではないことから、CO2地球温暖化とは関係がないと考えられる。参考→Wikipedia
その結果、びっしり張りつめていた氷が緩み、動きやすくなりました。動きやすくなったことで、ますます太平洋側から海水が運ばれ、氷ができにくい状態になりました。冬に氷ができにくいと氷が薄いままになり、夏に氷が融けきってしまいます。そしてさらに氷が動きやすくなり、海水が流入し…という循環ができてしまい、これ以降、氷は増えなくなってしまいました。

2007年にはさらに「氷の動き」が加速していることが分かりました。一度氷ができにくい状態になると、薄い氷は動くことで崩れやすくなります。今まで氷のなかった南側へも氷がどんどん出ていってしまいました。

このような「融ける、できない、出ていく」の悪循環により、北極の太平洋側から氷がなくなってしまっているということです。

誤解がないように強調しておくと、北極の氷は温暖な大気や暖水でどんどん融けているのではなく、冬場に十分な厚さの氷を形成できず、夏場まで氷の状態を保てないのです。さらに動くことでぶつかり合って崩壊し、南の海に出てしまうことで融けるものもあるということです。

北極の氷がもし全部なくなると、地球の海全体を冷やす力が弱まると考えられます。島田教授は「地球温暖化が北極を融かしているのではなく、北極が地球を温暖化する可能性の方が高い。」とおっしゃっています。

結論

つまり、北極の氷が減少したもっとも大きなきっかけは1997年のエルニーニョ現象にあったと考えられます。エルニーニョはラニーニャとセットになった地球温暖化とは関係のない自然現象(海洋変動)です。もしCO2による地球温暖化が進んでいたとしても、今回の北極海の氷の減少の主原因は海中の変化にあり、気温の影響によるものではないので、地球温暖化とは直接関係がないことがお分かりいただけたかと思います。

北極の氷が汚れている理由

海の温暖化による氷の減少とは別の問題として、北極の氷が全体に黒くなっており、大気汚染により発生したススが北極圏の氷の融解を早めているという報道もあり、大変気になります。これについては、通常の大気汚染ではなく、ロシア・シベリアの広範な地域で定期的に発生している大規模森林火災が影響を及ぼしているという説が有力なようです。

» 参考:シベリア森林火災、すすと灰が北極圏の氷と永久凍土の融解を加速 | AFP

表面が黒くなると、反射率が低下し熱くなりやすいことはよく知られています。白い車より黒い車の表面の方が熱くなるのと同じ原理です。ロシアは森林火災を食い止める資金が不足しているようで、毎回広大な面積(2019年は1200万ヘクタール)の森林火災が発生し、膨大な量のCO2すすや灰が発生しています。日本でどれだけ北極海の氷の減少を心配し、大気汚染やCO2排出量を減らす努力をしても、このような状況では焼け石に水ではないでしょうか。

(※2) 森林火災の原因:ロシアのような乾燥した地域では昔から自然発火による森林火災が発生してきました。夏から秋に起こる落雷もその要因のようです。メドベージェフ氏は放火が原因だと発言していますし、環境保護団体グリーンピースのべネスラフスキー氏は、気候変動と消火体制の不備という複合的な要因だと指摘しており、立場によって見解も様々です。

北極海航路ー日本への影響とメリット

北極海航路の開通は、日本にとってどんな影響があるでしょうか?
まずメリットとしてはヨーロッパ間の輸送費が今までより格段に安くなります。距離が南から行くより3割以上近いのです。平面地図では分かりにくいのですが、地球儀で見ると一目瞭然です。中国やアメリカにとっても、ヨーロッパ間の往来がしやすくなります。しかし一方で、氷に負けない耐氷船が高くつくというデメリットもあります。そして氷が少なくなったといっても夏場の1〜2ヶ月だけで、整備も不十分です。北極海航路の利用が拡大するかはまだ分からない状況といえそうです。

さいごに

地球は常に「人為的地球温暖化」などという一つの尺度では測れないくらいダイナミックに変動しています。もし北極海の氷がなくなってしまったとしても、地球の歴史においてはささいな自然現象にすぎないかもしれません。人間も自然の一部であるならば、そのような変化も受け入れていかざるをえないのではないでしょうか。

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2 COMMENTS

アッサジ

個人的には暑いのが嫌いなので温暖化は少し嫌ですが、地球が温暖化しようとしまいとどちらでも構わないとも思っています。実際してないと言われてたり、寒冷化の方が心配とか言われてますしあまり気にしてないのですが、温暖化対策とか言って無駄な活動をしていたり税金が無駄に使われていたり、いわゆる天下りに使われているとかそういうのはなんとか減らしていってほしいものだと思います。日本は国際競走に勝ち残るためにはもっとがめつくならないといけないんだろうなとも思いますし、税金を国内の地球温暖化対策とかに20兆円も使うのではなく他に有効的に使ってほしいものです。そのためにはメディアがそういう報道をしてほしいものだと思います。

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寺島てら

>アッサジさん
ほんとですね(この記事は温暖化での融解を否定した記事ですが)ウソでなければ温暖化でも寒冷化でも受け入れます。本当に起きていること、嘘じゃない理由が知りたいだけなんですよね。
嘘の理由を根拠に行動することは時間の無駄はもちろん、逆効果なことも多いです。どうせなら事実を元に有意義な行動をとれば人間の暮らしも環境も良くなるのになぁ…と思います。
でも結局、そういう利己的で非合理な人間のサガ・愚かさというものも自然のエコロジー(生態系)の一環なのかな…とすら感じます。

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