日本学術会議|菅首相が6人を任命拒否!何が問題?違法なの?—わかりやすく解説

日本学術会議

日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人を菅政権が任命拒否したことが「人事介入だ!」と議論をよび、野党やマスコミが批判しています。この問題は今後国会の焦点になりそうで、新たなモリカケ問題に発展する様相を呈してきました。

そもそも日本学術会議って何?なぜ菅総理は6人の任命を拒否したの?野党は何を批判しているの?なんだかよくわからないという人のために、全体を把握できるようにまとめてみました。

任命を拒否されたのはどんな人達?

まず、菅総理が任命を拒否した6名はこちらの人達です。

芦名定道(京大教授・キリスト教学)
宇野重規(東大教授・政治思想史)
岡田正則(早稲田大教授・行政法)
小沢隆一(東京慈恵医大教授・憲法学)
加藤陽子(東大教授・日本近現代史)
松宮孝明(立命館大教授・刑事法)

検索してみると、全員が社会学者で「安全保障関連法に反対する学者の会」という団体に所属し、日本の安全保障制度に強く反対している人達であることが分かります。

そもそも日本学術会議ってどんな組織?

日本には87万人の研究者がいますが、学術会議は全ての研究者の代表として活動しているわけではなく、ごく一部の(肩書きと人脈がある)階層が作っている組織です。身内の推薦がないと会員になれない閉じられた組織といえるでしょう。

10月9日追記:また、元学会員の発言から、学術会議は発足当時から共産党に牛耳られており、今もその影響下にあることが分かってきました。
» 参考:学術会議は共産党の活動拠点だった | アゴラ

210名の会員と約2000名の連携会員で構成され、いずれも任期は6年、3年毎に約半数が任命替えされます。1度会員になれば研究者としての評価もあがり、国から様々な手当が支給されます。学術会議には、年間10億円の予算を国が拠出しています。

日本学術会議のメンバーは、連携会員の2000人を含め全員が国家公務員です。そして政府の4兆円の研究予算配分に一定の影響力を持っています。文部科学省は彼らの意見も聞いて「日本がどんな研究を進めていくか」を決めるわけです。

そして日本学術会議は1949年、戦時中に科学者が戦争に協力したという過去を反省して設立されたという経緯があります。そのため、今に至るまで「軍事目的のための科学研究を行わない」という声明を何度も出しています。(共産党の方針に一致)

親中で日本の研究に圧力をかけている?

しかし、軍事目的にもなりえる研究というのはたくさんあります。たとえば、コンピュータ、インターネット、ドローン、AIや宇宙開発。軍事に転用できる科学技術は国の発展を支えるものも多く、あらゆる分野に制限がかかってしまいかねません。それに、一概に軍事目的の研究は「他国を侵略するための技術」というわけではありません。日本は隣国に脅威を抱えており、侵略されることを防ぐ為にも軍事防衛の研究が必須です。「軍事目的はダメ!」というのは、一見平和的に聞こえますが、軍事防衛に制限がかかってしまうと、安全保障に大きな影響、ダメージを及ぼしかねません。

でも、この学術会議の声明は理念上のことで、実際そんな影響力はないんじゃない?と思うかもしれません。しかし実際に、このような実例があります。

2016年度、北大の「微細な泡で船底を覆い船の航行の抵抗を減らす」という画期的な研究が防衛省に採択されました。しかし、学術会議が「軍事研究だ!」と非難し、圧力をかけたことで、研究を辞退させたというのです。

» 参考:【第724回】学術会議こそ学問の自由を守れ | JINF

また2018年には、国家的プロジェクトである「国際リニアコライダー」計画(素粒子研究)を拒否しました。これは軍事転用が可能だという面よりも、素粒子研究にだけ大型投資をすることへの「ねたみ」による阻止だと言われています。拒否に合理的理由がなく、検討会の記録には、自分たちへの予算に影響が出ないように「別枠予算」にするなら合意しても良いという意見が出たとあります。

» 参考:「宇宙の謎に迫る国家プロジェクト」に、日本学術会議が猛反発のワケ | ITmediaビジネス

このようなことからも、学術会議の存在が研究者の学問の自由を狭めており、日本の国際競争力や防衛力をも低下させている実態がお分かりいただけるかと思います。

10月9日追記:軍事研究の妨害以外にも、学術会議の提言は、復興増税に関するものや、レジ袋有料化に繋がる「マイクロプラスチックによる海洋汚染を削減」に関する提言など、国民に負担を強いる政治的なものばかりで、肝心の科学的な勧告は、この10年間1度も行われていないという報道が出ています。また学会員に中国ファーウェイ社の役員が含まれているなど、人選にも疑問が広がっています。

» 参考:【独自】学術会議を行革対象に…政府への勧告10年なく、組織・運営の見直し検討 | 読売新聞

そしてさらに問題なのは、学術会議が2015年、中国科学技術協会と相互協力する覚書を締結していることです。中国人民解放軍に協力する研究は容認し、日本の防衛研究は妨害する姿勢に批判が集まっているのは当たり前かもしれません。

菅総理の任命拒否は何が問題なの?

では今回、菅総理が学術会議の任命拒否したことについて、何が批判されているのか?そして、それは本当に問題なのか?実際にある5つの批判例を具体的に検証していきましょう。

批判1:総理の人事介入によって、学問の自由が脅かされる危険性がある!

日本学術会議は研究者の代表機関ではなく、個々の研究者の活動とは連動していないので、菅総理の任命拒否によって研究者の活動、学問の自由が脅かされることはありません。
上記の学術会議が研究に圧力をかけ、妨害した例からも分かるように、学問の自由を脅かしているのは、どちらかというと日本学術会議の方ではないでしょうか。

批判2:首相の任命拒否は制度がはじまって初。慣習を無視した暴挙だ!

初ではありません。2016年安倍政権の時にも、当時定年による欠員補充の為、3名の推薦候補が提出されましたが、任命を拒否したことがあります。

そもそも、なぜ内閣が任命するという手順を踏むのか?というと、学術会議は国民の税金を使って運営されている公的機関なので、最終的には国民の承認がいるわけです(※1)。国民が直接審査することはできませんから、国民が選んだ国会議員が最終判断を任されています。これは形式的なものであってはいけません。野党やマスコミがいくら人事介入だ!慣習を踏襲しろ!と騒いでも、国民に選ばれた政治家はその権限と義務があり、こういったシステムを形骸化させることは間接民主主義を否定することに繋がりかねません。

(※1) 学術会議の会員はもともと研究者の間で郵便選挙が行われ「公選制」によって選出されていましたが、国の機関であり会員は公務員という立場にあたる為、1985年中曽根政権下で「学会推薦制」に変更されました。(当時は総理府の機関)

そして、学術会議の推薦した人物を内閣総理大臣が任命するというシステムは、2005年学術会議が内閣府の機関になってから始まったもので「古くからの慣習」とも言えないのが実状です。

批判3:学術会議法7条2項で「推薦に基づいて」首相が任命すると書かれている。だから推薦を無視することはできない!

もちろん「推薦に基づいて」その内容を尊重する義務はありますが、任命を拒否する権利はあります。菅総理が、推薦された人を無視して違う人を任命した場合は違法になるのかもしれませんが、任命を拒否することは違法ではありません。

今回のように、公務員でありながら日本に不利益を与える活動を行っている可能性があり、国民が支持できない団体・人物であるという事実は、国民の代表である総理が任命判断する上で大きなポイントであり、推薦に疑いがある場合は、当然任命を拒否する権利は行使できると思います。

総理にはどんな事情で拒否したのか?という説明責任があるという意見もありますが、人事については(どんな組織でも)すべてを開示する必要はないため、学術会議が政府機関である限りは、菅総理が例えば「安保・治安立法に反対した活動家だから!」などと理由を明言しなくても、違法にはならないということです。

批判4:1983年の国会で「任命権は形式的な発令行為で、総理が裁量的人事をすることはない」と答弁されている。だから違法だ!

国会答弁はあくまで、その時点での政府解釈、運用指針を示すもので法的な決定事項にはなりません。そもそも、37年も前のこの答弁は日本学術会議の行動が日本社会に有益であり、適切な団体であるという前提に基づいて行われています。研究を妨害したり、反社会的な政治活動を行っていることが明らかになってきた場合、事情が変わるのは当然でしょう。

どちらにしても国会答弁は法的根拠にはならず、学術会議法の条文に総理大臣の裁量的な任命権が記載されている限り「国会答弁の記録があるから違法だ」とは言えません。また、2018年11月には、学術会議が推薦した人を任命する義務が政府にないことを内閣法制局が了承しています。

批判5:総理は天皇と同じで形式的任命権しかない。だから任命を拒否できない!

まず、憲法第4条に「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とあります。

天皇は、国民が選んだ人であれば、国民の象徴として「任命」を国事として行います。国政には関わらないルールになっています。ですから、天皇には形式的任命権しかないと言えるでしょう。しかし、国民が選ばなかった場合、例えばクーデターで政権をとった人が任命しろ!と言った場合は、もちろん任命を拒否できます。

一方、憲法第15条では「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とあります。

まず主権者である国民が議員を選び、議員が総理大臣を指名し、総理大臣が公務員を任免します。つまり間接的に国民が公務員を任免するルールになっているわけです。総理大臣は国民の代表として国政を行う立場ですので、天皇の立場は明らかに異なります。

学術会議が公務員である限り、国民の代表である総理大臣に裁量的な任命権があるのは当然と言えます。

まとめ

総理大臣の任命拒否権の行使が違法だ!という批判は短絡的で、どれも根拠薄弱と言えそうです。日本の科学技術の発展を妨げ、国民に不利益な政治活動を繰り返す日本学術会議を国のお金で運営することに多くの国民は反対するのではないでしょうか。少々人事権を利用した「荒療治」だと批判があっても、菅総理にはこのまま前例踏襲を打破していただきたいと思います。

多くの有識者が提言しているように、学術会議が独立した研究機関であると主張するなら、アメリカやイギリスのアカデミーのように、国から独立して民営化するべきでしょう。民営化した上で日本に有益な個別案件には国が予算を出すという方が透明性が高くわかりやすいのではないでしょうか。
(了)

参考URL
» 参考:学術会議会員は特別国家公務員 研究予算配分に影響力 | 日本経済新聞
» 参考:菅首相、任命除外への関与を示唆 「前例踏襲よいのか」 | Yahoo!ニュース
» 参考:学術会議を民営化して「学問の自由」を取り戻そう | アゴラ
» 参考:大屋 雄裕(慶應義塾大学・法学部・教授) | Twitter

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4 COMMENTS

アッサジ

なるほど。
なんとなく概略がわかりました。
ありがとうございます。
訳のわからない批判ばかりしたり足をひっぱるような無意味なことはやめてほしいものですよね。
最近竹中平蔵のことを少しだけ学んで、日本社会の闇の部分とか少し考えるようになりました。竹中平蔵はとりあえずすごい人ではあるだろうし悪なのかわかりませんが、そういう社会の裏側みたいなことはたくさんあるのでしょうし、いろんなニュース内容もその人たちは何が目的で言っているのかとか、考えないといけないですね。
まあ、それで変に知ったふうな気になって評論家気取りしてしまわないよう自重せねばいけないとも思う今日この頃の自分だぁ。

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一本指

なるほど!
いつも分かりやすい解説でとても勉強になります!
寺島さんの記事で良いと思う所が客観的な意見と事実を述べて、どちらかに思考が傾倒してないので勉強になります。

国会議員が公式的に質疑応答出来るのが国会だけってのは分かりますが、質問内容も何でもいい(質問内容に規制なんてないですよね?)予算を決める場でモリカケ問題とか予算に関係ない質問ばかりの国会に、1日に億円の予算が打ち込まれてる事に「こんなに予算使ってるのだから、ちゃんと予算について話し合え」って批判記事が出ないのが自分には不思議でなりません笑
国会について間違ってたら指摘お願い致します。

いつもタイムリーな記事を分かりやすく、かつ読みやすい文章ありがとうございます!

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欄の花

ありがとうございました。なるほどそう言うことだったのですね、非常によくわかりました。素晴らしいです。国民全員に知って欲しいです。感謝。

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